明日とその先を誓う












深夜。

ベランダに出て風を感じる。
この町に来て数週間経ったが、ここから見える味気ない夜景も今
日で見納めだ。

遠くの方でパトカーの音が聞こえる。馴染み深いはずのそれは、
外国の地では少し違って聞こえた。


「いよいよだな」

背後のガラス戸がカラカラと開き、電気の消えた部屋からここで
の同居人が現れる。

「……ああ」
「何だよ、緊張してんのか? お前らしくもねぇ」

同居人――工藤新一がおかしそうに言った。



怪盗が追う組織が黒の組織の一端であったのは、二人にとって運
命のようなものだった。
認め合い、密かに惹かれ合っていた二人は手を組んだ。

そうして二ヶ月前に潜入した施設で忌わしき薬のデータを発見し、
灰原哀の手によって解毒剤が完成した。

そして二人は作戦の最終段階に入るため、組織の本拠地が存在す
るアメリカへと渡ってきたのだ。

二人だけのアジトとして借りた、マンションの一室。
この場所は他の協力者たちも知らない。
長く厳しい戦いの中、二人には二人だけの場所が必要だった。

日夜、各々の方法で情報を探り、息抜きがてら食事をしながら情
報交換し作戦を練る。
人と会ったり情報のために自ら動く際に外へ出る時は、必ず二人
で連携しながら遂行した。

疲れたら交互にシャワーを浴び、そして寝る時は一つのベッドで
一緒に寝た。互いの温もりを分け合うように、抱き締め合って眠っ
た。
それはさながら、二匹の臆病な子猫が身体を寄せ合って眠るよう
な、そんな光景だった。


「新一……」
「何だよ、快斗」

隣に立つパートナーに、手を伸ばす。
新一の頭を胸に押し付けるように抱きこむと、嫌がって抵抗する
どころか背中に腕を回され、あやすように撫でられた。

「大丈夫だ」

死ぬ覚悟は何回でもしてきた。
けれど失う覚悟は、しかたすらわからない。

今腕の中にある温もりは、友人でもなければ恋人でもない、けれ
ど何よりも大切な片割れだった。

お互い危なかったことは何度もあった。
その度に乗り越えてこられたのはやっぱりお互いの存在のおかげ
だ。

明日が最後の決戦だと思うと、ぎりぎりに張り詰めた緊張の糸が
今にも切れてしまいそうで怖い。

同時に今、確実に忍び寄る死の気配が、己の中の欲求に明確な形
を与えていた。













「んっ……」

少し汗ばむ肌に舌を這わせる。
すっかり顕わになった上半身を辿っていって、胸の飾りを啄ばむ
と、横たわった身体が顕著に跳ねた。

下着を取り払い、脚を擦る。
相手の強靭な武器でもあるそれは、引き締まった筋肉の割に細く
白く、もどかしい快感に震えた。

「ぅ、あっ……ふ」

中心に触ると、羞恥から目を瞑ってしまったのを残念に思う。

「目、開けて」

頬をするりと撫でて囁く。
薄く開けられた二つの目を覗きこむように、鼻がくっつく距離で
見つめた。

「その綺麗な瞳を見せて。俺をお前の目に映して」

そのまま目を開いたまま口づけると、吐息を洩らしながらも同じ
ように見つめ返してくれる。

「ふ……んっ、んん!」

キスをしながら彼の中心を扱くと、片腕を首に回され、もう片方
の手は快斗の中心に伸ばされた。

「っ、新一、」
「あっ……ん」

互いを扱きながら深いキスを交わす。
手を濡らす二人分の液に煽られて、勢いを増す。

「一回、イこ」
「はっ、あ……ああっ!」


見つめ合いながら、荒い息を少し整える。
すると、新一が自分の手を口元に持っていき、べっとりと付着し
た快斗のものをチロリと舐めた。

「っ?! ちょっ、新一っ?」
「まじー」
「あたり前だって!」

予想外の行動に、頬が熱くなる。

「ま、何つーの? これってお前の生んだ命の欠片みてぇなもん
だろ?」
「なっ……」

だから今はお前の命を、ちょっと感じてみたかったんだ。
そんなふうに言われたら、もう抑えられなかった。

「……覚悟しろよ」
「え?」

白い体液に塗れたままの手を奥へと滑らせる。

「んっ!」
「久しぶりだから、ちょっと固いね」

指を一本侵入させて、入口を揉み解すように浅く出し入れすると、
中途半端な感触に腰がそわそわしている。

「腰、揺れてるよ?」

クスッと笑って腰を撫でてやると、新一は顔を赤くして睨みつけ
てきた。

「うるせっ」
「こらこら」

余裕の笑みで受け流して、指を一本増やす。

「ああっ!」

完全に勃ち上がったモノをからかうように軽く指ではじくと、突
然の刺激に驚いてびくっと震えた。

「あっ、はぁ……あ、ん……ああ」
「なぁ、何本入ってるかわかる?」
「あん! わ、かるわけ、ん、な……あっ」
「ねぇ、何本? 答えろよ」
「ああっ! あ、やぁ……ぁん……さ、ん?」
「残念、まだ2本。でももっとほしいみたいだからやるよ」
「あああ!」
「……新一、ホント俺の指好きだよな」

ぽつりと呟くと、両腕を首に回され、ぐっと身体を引き寄せられ
る。

「んっ、も……おまえ、が……ほし……」
「っ、」

指を一気に抜いて、喪失にヒクつくそこに自身を宛がう。

「んっ、うぅ……」
「俺を、感じて……」

埋め込んだ自身を、最初はゆっくりと、徐々に速く抜き差しする。
肌と肌がぶつかり合い、髪から滴り落ちる汗が飛び散った。

「あっ、あっ、ん……ああっ、ふぁあ!」
「新一、っ、気持ちいい?」
「や、ぁん! あっ、だめ、そ、こ……ああっ」
「ねぇ、新一」
「あっ、快、斗! い、イイ、からぁ!」
「はっ……イっていいよ、新一」
「ぁ……お前、も……あっ、快斗!」
「っ、くっ……新一!」
「は、あああっ!」



「はあ、はあ……」

ゆっくりと自身を引き出す。

「んっ」

栓を失ったそこから白い汁が溢れる様は、自分がやったとは言え
かなり刺激的な光景で、自分を律するために目を逸らした。
何と言っても、明日は決戦の日なのだ。これ以上無理をさせたら
作戦自体に支障を来しかねない。


「はは……お前の命、しかと受け取ったぜ……」
「し、新一っ」

ぐったりと横たわったまま、けれどどこか強い光を湛えた瞳で呟
くように言った新一に、愛しさと恥ずかしさが交ざり合ったよう
な気分になる。

こういう時だ。
本当に、この人と一緒に生きたいと実感するのは。
この人がいなければ、生きてる意味がない。


「快斗」
「ん?」
「お前がいてくれれば、俺は大丈夫なんだ」
「俺もだよ」
「……生きような。明日も、明後日も。その先もずっと」
「……うん」




ああ、本当に、全身全霊、君を愛してる。




















おかしい。甘くなった。
本当は組織戦の幕間での殺伐としたエッチを書きたかったんです
が。どうしてこうなった。
きっと「こいつら将来最強のバカップルになるな〜」と考えなが
ら書いてたからですね。
快斗より精神的に余裕がある包容受け新一好きです。

要するに、危険な状況だからこそ(生存本能が刺激されて)セッ
クスしたくなる。的な話。







12/09/04