<エピローグ> 「ふんふんふーん♪ 今日の放課後もいつものところ、と」 つい先日までの暗い空気が嘘のように、ここ数日の快斗はご機嫌だった。 「快斗、元気になったね」 「おうよ! もう毎日ラブラブで幸せだぜー」 鼻歌を歌い、くるくると踊りながら教室に入ってくる。他のクラスメイト は若干うざったそうに眺めていた。 「黒羽君、どうやら上手く行ったようだね」 「白馬! そういやオメー、あれが新一の女装だって気づいてたんだな」 「ああ、美術館で会った時にね」 「くそ〜、何で白馬が気づいて俺は気づかなかったんだ……」 「それはしかたないさ。僕は、工藤君が文化祭で女装したっていう話を、 偶然蘭さんに警視庁で会った時に聞いて知っていたし、その時の写真も見 せてもらってたからね」 「そうだったのか」 白馬が苦笑する。 「それに恋は盲目っていうしね」 *** 「今日も黒羽君と待ち合わせしてるの?」 「ああ、まあな」 「上手く行ってよかったね」 「お、おう」 少し照れくさそうに笑う新一に周りがそわそわしていることなんて、きっ と本人は気づいていないのだろう。 「蘭、お前のおかげだ。ありがとな」 「いーえー、意地っ張りな誰かさんは、手を貸してあげないといつまでも 幸せに手を伸ばせないんだもの」 「はは……」 実際その通りだったので、何も言い返せなかった。 「何よー、元はと言えば私のおかげでもあるんだからね!」 会話に割り込んできたのは園子だ。 昨日、借りていた制服を返したら何故か残念がられた。 「オメーは面白がってただけじゃねーか」 「でもそのおかげで黒羽君に出会えたんじゃない」 「まあ、それはそうだけど……あ、メールだ」 快斗からだった。 「えーっと……今日の晩御飯はシチューにしようよ。放課後、食材一緒に 買って帰ろうね……って、まさかあんたたち、毎日一緒に夕飯食べてるの?」 「わー! わー! おま、勝手に読むなよ!」 「待ち合わせはいつものとこで……だって。いつものとこ、って何かロマ ンチックよね」 「ちょ、蘭まで!」 <fin.>
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。 新一に女装させる、というありがちテーマで書きましたが、女装ものわりと 好きなので(笑)、またちょいちょい書くと思います。 12/08/14 |